〔沖縄県/H,Mさん/30代女性〕
私の母は占い師。
別に悪いことをしてる訳ではないけど、あまり友達とかに知られたくなくてずっと内緒にしていた。
テレビに出たり、雑誌の連載をもってるような凄い占い師ならともかく…自称「占い師」の母の実力がどんなモノか知らないし興味もなかった。
18歳…高校三年の春、私は担任の先生に恋をした。
イケメン…ではないけど、優しい雰囲気と年上なのにどこか頼りない感じ…でも一番は顔をクシャクシャとする笑顔にドキドキした。
毎日が楽しくなる…でもどんどん好きになって好きになった分辛くなる。
友達と先生をからかうようにして毎日話しかけた。一つでも先生の事を知りたかった。
4月は満開だった運動場の桜も葉が落ちすっかり冬支度。
放課後先生が他の女子生徒と仲良く話してるのを見てドキンとした。胸が苦しくなって、悲しくなって初めて「先生を誰にも渡したくない」って思った。なんだかブルーな気持ちで家に帰った。
「それは恋する乙女の顔だな」母がニタニタしながら話しかけてくる。
デリカシーのない発言に反抗しようにも凄く落ち込んでいて何も言えずに立ち尽くしていた。
カシャカシャ…母が占い師の顔になりタロットカードをきり出した。
何枚か私の目の前に出し「年上でしょ。嫉妬だけじゃ何も変わらないのよ」と言った。
ドキッとした。何も伝えてないのになんでわかるの!?少し動揺した。
「2週間後チャンスがあるからそこで気持ちを伝えなさい、卒業式終わったら真剣に付き合ってって」
「そ…そんなこと言える訳ないでしょ!」
そう言って自分の部屋に行ったけど…胸の鼓動が止まらなかった。母の言葉が頭から離れなかった。
2週間経った放課後友達といつものように先生をからかいに行った。あまり意識はしていなかったけど友達が急に放送で呼び出されて二人きりになった。
静かな教室…
「もうすぐ卒業だな」先生がいつもの優しい笑顔で言った。
もう会えなくなると思ったら胸がキュンとして下を向いてしまった
「どうした?」母の言ってたチャンスはこれだ!「…先生…」
気づけば思いは言葉になって止まらなくなっていた。
なんて言ったかハッキリ覚えていないけど先生は「ありがとう」って言って頭を軽くポンポンとした。
自称「占い師」の母はタロットで何でもお見通しのようだ。