高校の入学式スラッと背の高い一際目立つ彼に私は釘付けになった。
彼とはクラスが違うが気づけば彼を探している自分がいた。人見知りなんてしないタイプの私だけど一言も話す事が出来ないまま夏になり、夏休みが明けると彼は高校を中退していた。
…もう会えないかも…半分諦めていた。
そんな時友達が「彼氏が出来た」と紹介してくれた。その時一緒に来ていたのが紛れもない彼だった。なんとなくの流れでアドレスを交換して4人でよく遊ぶようになった。みんなと…いや彼に会えるのが嬉しくてついつい帰りが遅くなった。
「二人の邪魔できないよね」なんて友達カップルを思うふりをして二人で抜けた。でも彼の原付バイクの後ろに乗っている所を母に見つかってしまい、厳格な父の耳にもその話はすぐ入ってしまった。
家に帰ると父が部屋に来た。
「もう会うな」
父はその一言だけを残して部屋を出て行った。
彼から「今度は二人でちょっと遠くの海とか行く?」とメールが入った。嬉しかった。すぐにでも「うん、行く!」と返信したかった。でも親に逆らうのも恐かった。悩んで悩んで…前に雑誌に載っていた電話占いの事を思い出した。半信半疑だったけど電話をせずにはいられなかった。誰かに聞いてほしかった。
あまり何を話したかは覚えてないけど、泣きじゃくる私に「ゆっくりでいいのよ」と優しく耳を傾けてくれて最後に占い師さんがこう言った…
「彼とは結婚する運命だから悲しまないで」
嘘でも、ハズレるとしても嬉しかった。
メールの返信が出来ないでいると彼から次々メールが来ていろいろ聞かれた。私は正直に両親のことを話した。
彼は「高校中退しちゃってフラフラしてる中途半端な俺だけど、○○を幸せにしたい」とメールをくれた。
彼はそれから定職に就き真面目に働いて何度も私の家に挨拶に来た。始めは全然相手にしてくれなかったけど私が高校を卒業する頃にはすっかり父と彼は仲良くなった。
3年の交際期間を経て今は私の自慢の夫。
「あの時あの占い師さんと繋がってなかったら彼を諦めていたかもしれない。」今でもそんな風に思う。勢いでかけた電話…占い師さんの名前も覚えてない…
でもあの声は絶対忘れない。